伝統と革新が織りなす絣 – 山村かすり工房訪問

はじめに

福岡県の広川町は、久留米絣の産地として数多くの工房が点在する地域です。
久留米絣は福岡が誇る伝統工芸として、その独特の藍染めの美しさと丈夫さで古くから親しまれてきました。
今回、私は「山村かすり工房」を訪れる機会に恵まれました。

山村かすり工房との出会い

広川町は久留米絣の工房がもっとも多く存在します。その中でも今回ご縁があり、山村かすり工房様を訪問しました。

個人的に、ここのご夫婦は私の中でベストパートナー賞です。
ほんとにほんとに素敵なご夫婦です。
旦那様はとても社交的で穏やかで優しく、それでいて職人気質の方。奥様への愛が表情に出ています。
奥様も女神様のような方で、明るく穏やか、細やかな心配りのできる方で愚痴や嫌味や悪口とは無縁な感じの方です。
ピアノの先生でもあります。素敵。

そんな素敵なご夫婦が従業員の方々と営まれている絣の工房です。
工房に足を踏み入れた瞬間から、織物の音色と藍の香りに包まれる独特の雰囲気に引き込まれました。

伝統を守る職人たち

山村かすり工房では、7人の熟練職人が日々、伝統の技を守りながら布を織り続けています。
ここでは手織りと機械織りを巧みに使い分け、さまざまな表情を持つ久留米絣の反物が織り上がっていきます。

職人たちの手元を見つめていると、糸を染め、模様を決め、織り上げるまでの全工程において、長年の経験と熟練の技が光ります。
特に、絣独特の風合いを出すための染色技術と織りの技法は、一朝一夕で習得できるものではありません。
職人たちの真剣な眼差しと繊細な仕事に、絣への深い愛情と誇りを感じました。

余談ですが、私の子供の同級生のお母さんが職人さんとして働いていました。
職人さんだったとは!働いてる姿はかっこよかったです。

伝統と技術革新の融合

山村かすり工房で使用されている織機は、トヨタグループの創始者である豊田佐吉が1915年に開発した豊田式鉄製小幅動力織機(通称:Y式織機)だそうです。
この織機は、100年以上経った現在でも久留米絣の生産に使われており、伝統的な織物技術を保持しつつ、機械化による効率性を両立させています。

山村かすり工房の3代目である山村義昭氏は、この織機を使用して昔と今の絣技術を巧みに組み合わせ、明治・大正時代の絵柄の復元や藍染めの動力織りを取り入れた伝統的な絣を制作しています。
Y式織機は、久留米絣の生産において重要な役割を果たし続けており、その耐久性と効率性は、100年以上にわたって産地の織物生産を支えてきました。

工房内では、伝統的な手織りの技法を大切にしながらも、必要に応じて機械織りを取り入れることで、品質の安定と生産効率のバランスを取っています。
このような柔軟な姿勢が、時代の変化の中でも久留米絣の伝統を守り続ける秘訣なのかもしれません。

幅広いファン層と現代への展開

山村かすり工房の製品は、その品質の高さから多くのファンを獲得しています。
訪問日前に展示会をしていたらしく、残っている商品がだいぶ品薄になっていました。

伝統的な柄から現代的なデザインまで幅広く展開していることで、年配の方だけでなく若い世代からも支持を得ているのが特徴です。
久留米絣に魅了され、こだわりの柄でお子さんの七五三の衣装を作られた方の写真が飾られていました。
伝統工芸が若い世代に受け入れられている姿を目の当たりにし、嬉しく思いました。

地域文化への貢献 – 博多山笠との繋がり

特筆すべきは、山村かすり工房の生地が福岡の伝統行事「博多山笠」でも使用されていることです。
(柄はネットで公開したらいけないらしく、残念ながら載せられません。ごめんね)
700年以上の歴史を持つこの祭りで使われる装飾や衣装に山村かすり工房の久留米絣が採用されており、福岡の文化継承にも大きく貢献しています。

豪快で力強い博多山笠の雰囲気に、繊細な絣の模様が不思議と調和し、福岡の伝統文化の奥深さを感じさせます。
祭りの時期になると、工房は特別な活気に包まれるそうで、博多との強い結びつきを感じました。

久留米絣の新たな可能性

さらに注目すべきは、この工房の久留米絣を使った創作活動の広がりです。
洋服デザイナーや服飾作家たちが、山村かすり工房の伝統ある生地を用いて現代的な洋服やバッグ、小物などを生み出しています。

工房内に展示されていた現代的なワンピースやジャケットは、伝統的な絣の美しさを生かしながらも、現代のファッションとして十分に通用する洗練されたデザインでした。
伝統工芸と現代ファッションの融合により、久留米絣の新たな魅力が発見され、より多くの人々に親しまれるようになっています。

絣は丈夫で長持ちするし、色落ちしない工夫がされていて、日常的な衣類として大活躍してくれそうです。
子供の服としてもいいなと思いました。

訪問を終えて

山村かすり工房を後にする際、私は改めて日本の伝統工芸の素晴らしさと、それを守り続ける人々の情熱に心を打たれました。
特に印象的だったのは、工房を営むご夫婦の人柄と、職人たちとの調和のとれた関係性です。

伝統を守りながらも時代に合わせた進化を続ける山村かすり工房は、日本の手工芸の素晴らしい一例と言えるでしょう。
これからも多くの人々に久留米絣の魅力が伝わり、次の世代へと受け継がれていくことを心から願います。

久留米絣という伝統工芸に触れ、その背後にある人々の物語に出会えたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。
皆さんも機会があれば、ぜひ山村かすり工房を訪れ、日本の伝統文化の息吹を感じてみてください。

近くに工房がたくさんありますが、「ピアノ教室」という看板が目印の工房です。

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