いちご農家として生きる梅本さんの20年

20年前、サラリーマンとして働いていた梅本さんは、家業である農業を継ぐことを決意しました。大企業の社員としての安定した生活を捨て、自然の中で土と向き合う日々への転身。それは決して楽な道ではありませんでしたが、いちご農家としての20年間を振り返ると、そこには大変さと同じくらい、やりがいも詰まっていました。

広川町のいちご

いちご農家のやりがい

消費者の喜びが直接伝わる

いちごは多くの人にとって特別な果物です。子どもから大人まで、甘くて美味しいいちごを食べる瞬間は、誰もが笑顔になります。梅本さんは、自分が丹精込めて育てたものが、直接消費者の喜びにつながることに大きなやりがいを感じています。「出荷するとき、”たくさんの人を笑顔にしておいで”と心の中で思いながら、見送ります」と語ります。

自然と共に生きる充実感

いちご栽培は、単なる作業ではなく、自然と対話する仕事です。天候や土の状態、害虫の発生状況などを日々観察し、最適な管理を行うことで、美味しいいちごを育てることができます。特にいちごは陽の光を浴びないと赤くなりません。「きれいなイチゴを作るために管理が大変ですが、自然のリズムを感じながら働くことで、季節の移り変わりを実感できるのが魅力です」と梅本さんは言います。

あえて土で育てる

いちごの栽培方法もどんどん進化していて、今は水耕栽培をしているところも多いんですが、梅本さんはあえて土でいちごを育てています。

水耕栽培には多くのメリットがありますが、土には土ならではの良さがあるそうです。土の中には無数の微生物が生きていて、いちごの根と共に呼吸し、栄養を与え、じっくりと育ててくれます。

天候や環境に左右されやすいからこそ、手間をかけ、一株一株を丁寧に育てる。そのひと手間が、味や香りに深みを生み、土でしか出せない風味へとつながるのです。
効率や安定だけを求めるのではなく、自然の力と向き合いながら育てた、力強く、生命力あふれるいちごが好きなんだそうです。

いちご農家の大変さ

天候に左右されるリスク

農業は天候に大きく左右される仕事です。特にいちごはデリケートな作物で、気温が高すぎたり、寒すぎたりすると成長がうまくいかないこともあります。また、豪雨や台風の影響でハウスが破損したり、病気が広がるリスクもあります。台風の前日はビニールをとってしまわないと、ハウスが壊れてしまうことも。「天気だけはどうにもならないので、毎年ヒヤヒヤしています」と梅本さんは苦笑します。

広川町のいちご

いちごは太陽の光を浴びないと赤くならないので、
このように常に邪魔な葉っぱをちぎって、じゅうぶん日光浴させるそうです。
数え切れないほどのいちごの管理は大変そう。

体力的な負担が大きい

いちごの収穫は冬から春にかけて行われますが、苗作りなどの作業も含めると、ほぼ1年中手間をかけないといけません。ビニールハウスの中での作業は決して楽ではありません。腰をかがめての作業が続くため、体への負担は大きいです。実は私の夫の両親もいちごを作っていて、私も1回だけ苗植えを手伝ったことがありますが、それはもう大変な作業でした。とにかく腰がきつい!!

経営の厳しさと販売の自由度の制限

農業は生産だけでなく、経営も大きな課題です。いちごは比較的高単価な作物ですが、肥料代や設備投資、燃料代、ハウスの維持費など、コストもかかります。「昔に比べて資材の価格や農薬・燃料など全ての費用が上がっているので、利益を出すのが難しい」と梅本さんは語ります。

調べてみると、JAの2019年3月5日のいちごの卸価格は1228円/kg 2025年3月5日は1822円/kgで、いちごの卸価格自体は上がっていますが、燃料費や肥料の上昇率はもっと高く、所得は減少傾向にある農家さんが多そう。

さらに、JAによる強い縛りがあるため、特にいちごは自由に販売することが難しい現状があります。品種を守るためにはしょうがないとはいえ、形が悪く売り物にならないいちごを安価で勝手に販売することもできないそうで・・・
もう少しだけでも、この縛りが緩和されれば、自分たちで販路を見つけて形が悪いいちごを割安で届けることができるのに。すっかり高級食材になったいちごを、もっといろんな人に食べてもらえるのに・・・と私は思ってます。梅本さんは、販路開拓まではできないと言われていましたが。

それでも続ける理由

「農業は本当に大変だけど、それ以上に魅力がある」と梅本さんは言います。苦労して育てたものが形になり、それを美味しいと言ってくれる人がいることが、何よりの励みになっています。また、家族と一緒に働ける環境も魅力の一つです。「家業を継ぐことで、親や子どもと共に時間を過ごしながら仕事ができるのも幸せなことですね」と笑顔を見せます。

梅本さんは、農業をしながら3人の子どもを育て上げました。収穫や販売の忙しさの中でも、子どもたちの成長を見守り、時には家族総出で農作業を手伝ってもらうこともありました。「子どもたちには、自然の中で働くことの大切さを感じてもらいたかったし、家業を通じて生きる力を養ってほしかった」と語ります。3人の子どもはそれぞれの道を歩みながらも、農業の大変さとやりがいを理解し、時折手伝いに来てくれるそうです。

いちご農家としての20年は、決して楽な道ではありませんでした。しかし、そこには確かな充実感と、続ける価値がありました。これからも梅本さんのいちごは、多くの人に喜びを届けていくことでしょう。

さいごに

梅本さんは謙虚で、あまり貪欲なことを言いませんでしたが、私は個人的に、梅本さんはじめ広川で作られたいちごをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。全国に出荷されているあまおうの出荷量は、実は広川町が一番多いんです。
それなのに、あまおうが広川町で生産されているということは全国的に浸透していません。
だから情報発信によって、もっともっと認知度を高めたいです。20年前には想像もできなかったような、新しい売り方ができる時代です。
認知度を高め、販路を開拓していき、広川町の農家さんの所得を少しでも上げたいと思っています。

こっそり撮った梅本さんw
写真NGだけど、どうしても作業風景を残したかったのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です