久留米絣(くるめかすり)は、福岡県久留米市を中心に発展した日本の伝統的な織物です。藍染めの美しい模様と耐久性に優れた実用性を兼ね備えた織物として、約200年の歴史を持ちます。
久留米絣の聖地、広川町
福岡県八女郡広川町は、久留米絣の一大産地として知られています。この地域には数多くの工房が点在し、熟練の職人たちが伝統的な技法を守りながら久留米絣を生産しています。広川町の工房では、染色から織りまでの全工程を一貫して行うところも多く、丁寧な手仕事による高品質な久留米絣が生み出されています。訪れると職人の作業風景を見学できる工房もあり、久留米絣ファンにとっては貴重な体験ができる場所となっています。また、広川町では定期的に久留米絣に関するイベントやワークショップも開催され、地域全体で伝統工芸を支える取り組みが行われています。
久留米絣の歴史

久留米絣は江戸時代後期の1800年代初頭に、井上伝(いのうえでん)という女性によって考案されたと言われています。当時の農村では実用的な布として広く使われ、農作業着や普段着として愛用されていました。丈夫で長持ちする特性から「百年絣」とも呼ばれ、代々受け継がれる大切な衣料でした。
久留米絣の特徴

久留米絣の最大の特徴は、「先染め」の技法にあります。糸をあらかじめ染めてから織ることで、独特の風合いと模様を生み出します。主に藍色を使った縞模様や格子模様が特徴的で、シンプルながらも深みのある美しさを持っています。また、綿100%の素材を使用しているため、肌触りが良く、耐久性にも優れています。
伝統工芸としての価値
久留米絣は1957年に国の重要無形文化財に指定され、その技術と文化的価値が認められています。伝統的な技法を守りながらも、現代のライフスタイルに合わせた新しいデザインや用途の開発も進められています。
現代における久留米絣
近年では、久留米絣は単なる伝統工芸品ではなく、ファッションやインテリアアイテムとしても注目を集めています。バッグ、ストール、テーブルクロス、クッションカバーなど、様々な形で現代の生活に取り入れられています。また、若手デザイナーによる新しい解釈やアレンジも見られ、伝統と革新が融合した新たな表現も生まれています。